Prokovief / Romeo and Juliet Suite for Wind Orchestra TOKAI



ハーツウインズ第18回定期演奏会
ハーツウインズならではのプログラム、
長きにわたり親しまれてきた名曲を
一流の演奏家によって今回もお届けいたします。
ハーツウインズ第18回定期演奏会 名曲シリーズ③
2022年9月28日(水) 19:00開演18:30開場
杉並公会堂大ホール 指揮 大澤健一
★吹奏楽史上重要とされている名曲をチョイス。
今回は、生誕150年を迎えたイギリスの20世紀を代表する巨星
R.V.ウィリアムズ「吹奏楽のための変奏曲」。
「呪文と踊り」「朝鮮民謡の主題による変奏曲」で有名な
J.B.チャンス「交響曲第2番」。どちらも名曲と云われながらコンサートで取り上げられる機会の少ない貴重な作品です。是非この機会にご堪能ください。
後半は、人気日本人作品から、酒井格の「森の贈り物」。
そして日本人のアイデンティティを見事に吹奏楽で表した
真島俊夫「三つのジャポニズム」をお届けします。
どちらも日本の自然の美しさ、景色や祭りの情景を表現、
懐かしさ哀愁に満ちた音楽をお楽しみください。
チケットは出演者ほか、BASEオンラインストアにて
https://heartswinds.base.shop(9/27まで)
プログラムノート
吹奏楽のための変奏曲/作曲:レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ/編曲:ドナルド・ハンスバーガー

レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ(Ralph Vaughan Williams, 1872年10月12日-1958年8月26日) イギリス、グロスターシャー州ダウンアンプニー出身の作曲家。ロンドンの王立音楽大学で作曲を学び、在学中にホルストと知り合い親交を深める。民謡の採集や教会音楽の研究を通して独特の作風を確立し、イギリス人による音楽の復興の礎を築いた。イギリスの田園風景を彷彿とさせる牧歌的な作風は、広くイギリス国民に愛されている。
今年が生誕150年というヴォーン・ウィリアムズの代表作品と言えば、グリーンスリーブスをあげる方が多いと思う。この曲は16世紀頃のイングランド民謡として古くから歌われてきた歌。彼はこの楽曲を使って自作のオペラ「恋するサー・ジョン」の間奏曲「グリーンスリーブス幻想曲」を作曲したが、独立した楽曲として彼の最もポピュラーな作品として世界中で親しまれている。
イングランド、スコットランドは民謡の宝庫で様々な楽曲が今日でも歌い続けられてきている。これら民謡を題材にしてヴォーン・ウィリアムズは「イギリス民謡組曲」を軍音楽隊に提供し、親友のグスタフ・ホルストも「吹奏楽のための第2組曲」を書いた。後にパーシー・グレンジャーは「リンカーンシャの花束」というイギリス民謡集を書いている。どれもイギリス吹奏楽の名曲として親しまれている。ポップスの世界でも、ビートルズ、エンヤ、エド・シーランなど多くのミュージシャンがスコットランド、イングランド、アイルランド地方の民謡を題材にして世界的ヒットを書いている。16世紀のイングランドというと、政略結婚を6回も行ったヘンリー8世が有名であるが、「グリーンスリーブス」は王妃アン・ブーリンのために作曲されたという興味深い説もあるが真意は不明。イギリス長編ドラマ「The Tudor」では当時の模様が忠実に描かれていてこの時代を知るには大変お薦め。

さて、イギリスというとその穏やかな田園風景が印象的である。日本と同じ島国で気候も似ており四つの季節もある。特に野山の稜線は柔らかく、沼地が点在する風景に魅了される。ヴォーン・ウィリアムズの音楽には、この風景と自然が感じられる。さらに我々日本人にとても共感できるものがある。多分に音階がそう感じさせている。西洋音階の4番目と7番目の音を抜いた、ヨナ抜き音階(ドレミソラ)の日本音階はスコットランド民謡にも多く出てくる五音音階と同様である。ヴォーン・ウィリアムスはこの音階をよく使う。今回の変奏曲の冒頭に出てくる主題が正にそうである。
冒頭は五音音階で始まる。ドーレミソラーそれはまるで堂々とした山並みでありそれに続く変奏は、大自然の様々な姿を表現している。明るい田園や雲の流れ川の流れの風景だ。それは作者の自然に対する「畏敬愛」であり、同時に晩年を迎えた彼の充実した「人生」が変奏として脈々と語られているようだ。やがてそれは実直に力強く幕を閉じる。ヴォーン・ウィリアムズは生涯9曲の交響曲を書いたが、海の交響曲(第1番)、田園交響曲(第3番)、南極交響曲(第7番)にあるように大自然をテーマにした交響曲がある。
「吹奏楽のための変奏曲」の原曲はアマチュア金管バンドのコンテスト用に1957年に作曲されたが最晩年に金管バンドのために書いていることが興味深い。民謡と宗教音楽に造詣が深く、また教育者として学術研究書も多く発表されていることから、多くの一般市民が親しむ金管バンドへ「質の良い音楽」を提供したのは頷ける。後に弟子のゴードン・ジェイコブが管弦楽用にイギリス民謡組曲とこの曲を編曲しているが、管弦楽曲としても見事な音楽が展開される。いずれにしても、最晩年に書かれた「吹奏楽のための変奏曲」はヴォーン・ウィリアムズの集大成に相応しい音楽であることは、今夜の演奏で明らかになるであろう。
今回演奏する吹奏楽版の編曲者ドナルド・ハンスバーガーは元イーストマンウインド・アンサンブルの指揮者で、日本にも何度も来日している。自身がイーストマン・ウインドアンサンブルのユーフォニアム奏者出身であったことから、私個人として来日の度に親交を深め、ウインド・アンサンブルについて様々なアドヴァイスを頂いた。通常の編成にないアルトフルートやピッコロトランペットが使われており、そのこだわりが興味深い。

交響曲第2番/ジョン・バーンズ・チャンス

ジョン・バーンズ・チャンス(John Barnes Chance、1932年11月20日 – 1972年8月16日)は、米国テキサス州ボーモント生まれの作曲家。ボーモント高校のバンドとオーケストラでティンパニーを演奏している頃から作曲を志しテキサス大学にて、クリフトン・ウィリアムズ(ファンファーレとアレグロ、交響組曲で米国吹奏楽作曲賞ABA第1回第2回受賞者)に作曲を師事する。大学ではフランシス・マクベス(作曲家)と親交があったが、彼らとの3人組はオーステインスリーと云われていた。しかし当時の学生たちのヒッピー風潮に影響され、大学授業に欠席が多く一度退学している。(共感できる)最終的にはテキサス大学へ復学し修士号を得ている。(やはり志を捨てない)大学やオースティン交響楽団でティンパニ奏者として活動した後、1957年米陸軍軍楽隊の専属編曲者として活動。その一年後、朝鮮戦争の最前線の第8軍隊に、強制的に派遣される。この陸軍の決定に猛烈に文書で抗議したがその要求は拒否されている。しかしこの韓国での経験とインスピレーションは1965年に発表されて見事ABAを受賞する「朝鮮民謡の主題による変奏曲」に繋がった。1960年陸軍を除隊し、フォード財団のプロジェクト若手作曲家に選出される。この時代に多くの教育的な作品を発表している。その業績が認められ1966年ケンタッキー大学にて教鞭をとり1971年に作曲、理論の主任になる。しかしその翌年、自宅庭にて愛犬を隔離するための電気柵を作成中に200ボルトのワイヤーが原因で感電事故を起こし急死した。39歳での他界は、あまりも突然の悲報であった。将来を期待された若き作曲家の作品は、教育的な作品が有名で『呪文と踊り』、『朝鮮民謡の主題による変奏曲』、『ブルーレイク序曲』などは若い奏者が取り上げる作品として人気がある。
吹奏 楽 と 打楽器 の ため の 交響 曲 第 2 番 は、 チャンス が グリーンズボロ に い た 頃 の 吹奏 楽 の ため の 初期 の 交響 曲 に 基 づい た作品です。彼 の師クリフトン・ ウィリアムズ は、 それぞれ が 4 音符 の モチーフ C#- D- F-Fで 作品 を 書く こと に 賛成しました。1962 年 2 月、 チャンス は 1楽章の テープ を ウィリアムズ に 送り ました。しかしウィリアムズはさらなるアイデアが必要だと伝えました。10 年 後、ノース ダコタ 州 北西 音楽 センター が 彼 に Minot State College Wind Ensembleの為 の委嘱を依頼してきました。彼は10年前のこの未完成曲に手を加え、緩徐セクション と コーダ を 追加 し、 彼 の 元 の アイデア( 3楽章Slancio) を完成させ依頼 を 完了 し まし た。しかし不慮の事故により残念 ながら、 彼 は 完成 し た 作品を聴く事はできなかった(何という不運か)(CD. The Legacy John Barnes Chance より)
第1楽章Sussuradoスッスランド(ささやくように、つぶやくように)モチーフ C#- D-F-Eを繰り返し再現しながら展開させていくソナタ形式。C#- D-F-Eが「ささやかれ」て、楽器が少しずつ増えてゆく展開こそ交響曲作品である!といった教育的な配慮があると思う。一つのテーマを自由に発展させそれをソナタ形式で完結させる手法を、演奏者に分かり易くさらに音楽性に富み興奮と驚き、興味を持たせるように書かれている。テーマは長くては覚えられない、単純なほど展開の可能性が多くなる。かの名曲ジャジャジャジャーンの様に。時には何方かのイニシャルを使ったり、チャンスのC#- D- F-E(ド♯ーレーファーミー)は、きっとあなたの頭に巣作ってしまうだろう。そのまま2楽章、3楽章に変化する17分間のトリップを楽しんでもらおう。
第2楽章Elevatoエレヴァート(気品をもって、気高く)バスクラ、コントラバスクラとトロンボーンのペダルトーンによるB♭音上にクラリネット、ホルンによるゆったりした深淵の響きが拡大していく。深い沼の底から水面を見るようなミステリアスな世界が表現される。やがてその静寂に、テーマC#- D- F-Eを反転させたD-C#- E-Fの素早い音形が信号のように繰り返されアタッカ(次の曲へ休みなしで進む)で3楽章へ進む。
第3楽章Slandoズランチョ(突進、勢い、情熱)全楽章の発想記号は、あまり使用されない楽語だが、チャンスのこだわりが感じられる。この楽章は、テーマC#- D- F-E(ド♯ーレーファーミー)の終結といえよう。特にtimpani奏者であったチャンスの見事な管楽器と打楽器の掛け合いが印象的。また随所に彼が影響を受けた同時代の作曲家の手法が見ることができる。バーンスタインのウエストサイドが見えたり、特にウィリアム・シューマンのチェスターやジョージ・ワシントン・ブリッジにある木管セクションと金管セクションの掛け合い(私の大好きな所!)が、チャンスの見事な掛け合いに蘇っている。(ここ好きだ!)もっと長生きして沢山の名曲を書いて欲しかった作曲家、上品なお顔も2枚目で素敵でした、どんな作品が生まれたのだろうか。今年で没後50年、命日は真夏の8月16日。合掌。
酒井格/森の贈り物 Legacy of the Woods

1970年3月24日大阪生まれ。4歳からピアノを習い始め、6歳で最初のピアノ作品を作曲。高校時代では吹奏楽部でフルートを演奏、最初の吹奏楽作品「たなばた」を作曲する。1990年大阪音楽大学作曲科に入学し、千葉英喜、田中邦彦の両氏に作曲を師事する。1994年同大学を首席で卒業後、同大学院に進学1996年に修了。プロの吹奏楽団から、アマチュアバンドまで数多くの委嘱を受け新作を発表。選抜高等学校野球大会では2009年の第81回大会以降、入場行進曲の編曲も行う。
森の贈り物(2003年)作曲者の解説から〜日本の南西部、鹿児島県に屋久島という深い森に覆われた島があります。1993年にユネスコの世界遺産に登録されたこの森には、樹齢7200年といわれる縄文杉をはじめ、樹齢1000年を越える巨木が数多くあり、その佇まいは神々しく、神秘的ですらあります。古代から、島に住む人たちに大きな恵みをもたらしてきたこの森も、数十年前には木材需要の高まりにより、数多くの樹木が伐採され、森が失われる危機に見舞われたこともありました。しかし森の大切さを訴える人たちの、真摯な願いが叶い、現在では緑豊かな森が多くの人たちによって守られています。目をつぶって耳を澄ませると、鳥の鳴き声、水のせせらぎが聞こえ、私たちが生きるのに必要な美しい空気を作り出してくれる森。屋久島のような大森林でなくとも、そんな豊かな恵みを残してきてくれた多くの森がが、これからも私たちの手によって守られて行くことを願って、この作品を書きました。
森の精の歌声、森の長老の語り、森の生きもの達の行進、ある時は嵐に襲われる森ですが、嵐が去って美しい森の景色が広がる様子を、この曲から感じ取って貰えるでしょうか?
真島 俊夫/三つのジャポニズム Les Trois Notes du Japon

真島 俊夫(ましま としお)1949年2月21日 – 2016年4月21日)山形県鶴岡市出身。山形県立鶴岡南高等学校から神奈川大学工学部へ進学(吹奏楽団ではトロンボーン担当)。作曲家を志し和声法と作・編曲法を兼田敏に師事。全日本吹奏楽コンクール課題曲をはじめとする数多くの吹奏楽曲を作曲している。また1990年代より「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」にスコアを提供、代表的な編曲作品としては「宝島」「オーメンズ・オブ・ラブ」「チュニジアの夜」等がある。そして「ドラゴンクエスト」シリーズの全吹奏楽編曲を担当。吹奏楽界のジャズ・ポップスの啓蒙に努める。2006年、フランスのリールで開催されたクー・ド・ヴァン国際交響吹奏楽作曲コンクールに於いて『鳳凰が舞う』がグランプリを受賞。
三つのジャポニズムは、2001年4月27日にダグラス・ボストック指揮の東京佼成ウインド・オーケストラにより初演され、その後ヨーロッパやアメリカでも多くのバンドによって演奏されている。以下作曲者自身による解説。
「鶴が舞う」は丹頂鶴の求愛の踊りである。丹頂鶴は頭頂部の赤と一部の黒い羽が全体の白い羽とのコントラストを見せて美しい。そして雄がコーと一声鳴くと、雌がコーコーと答える。途中、鶴の羽ばたきと鳴き声の描写が入る。

「雪の川」は冬の峡谷を静かに流れる川に、雪がしんしんと降り続ける墨絵のような光景を描写した。

「祭り」は激しい夏祭りを描写で、いろいろな祭りのリズムが目まぐるしく登場する音のコラージュになっている。中間部は夏の炎天下、青空に入道雲が出ている日本の夏の光景だ。やがて遠くから聞こえてくる太鼓は、私が子供の時から親しんだ母の生まれ故郷、青森の「ねぶた」のリズムである。
●1楽章の鳥の羽音は、団扇か扇子と手を打ち合わせて出して下さい。丁度、焼き鳥か鰻の蒲焼きを焼くときの要領です。
●2楽章の「竹鳴子」は手に入らないので自作をお勧めします。直径約2㎝、長さ20㎝位の竹の棒を20〜30本用意します。これらの上端に穴を開け、紐を通して板に吊るします。竹製のウインドチャイムと考えて下さい。2〜3列にすると鳴りが良いです。この下部を手のひらで左右に揺らすようにかき鳴らします。カラカラカラという音です。
●3楽章の桶太鼓のバチは竹の棒を使います。剣道の竹刀を分解して適当な長さにに切ったものを2本使うのが一番近いです。先で叩くのではなく、膨らんでいる中間部の面で打つ感じです。ドンではなく、バンッという感じです。最近は「ねぶた祭り」の動画もたくさんありますから、研究して下さい。(弘前の「ねぷた」ではなく、青森の「ねぶた」です。
ハーツウインズ第17回定期公演
ハーツウインズの公演案内です。
今回は、お陰様でAFF文化庁助成公演になりました。
どうぞ「名曲コレクション②」をお楽しみ下さい。
●行進曲「ツェッペリン伯爵」/タイケ
●ハイドンの主題による幻想曲/デロ=ジョイヨ
●吹奏楽の為の交響曲Bdur/ヒンデミット
●アルフレッド・リード生誕100年
音楽祭のプレリュード
羊は安らかに草を食み「JSバッハ/カンタータ208より編曲版」
第二組曲「ラテンメキシコ風」
チケット購入は、Hearst winds official websiteで取り扱います。http://heartswinds.mystrikingly.com
洗足学園音楽大学ブルータイ ウインドアンサンブル
ブルー・タイ ウインド・アンサンブル演奏会

プログラム
W.H.シューマン/ジョージ・ワシントン・ブリッジ
William Howard Schuman (1910-92) // George Washington Bridge
M.グールド/吹奏楽のためのバラード
Morton Gould (1913-96) // Ballad for band
J.C.バーンズ/パガニーニの主題による幻想変奏曲
James Charles Barnes (b.1949) // Fantasy Variations on a Theme by Niccolo Paganini
J.F.A.イベール (編曲:天野正道)/祝典序曲
Jacques François Antoine Ibert (1890-1962) arr. Masamichi Amano // Ouverture de Fête
真島 俊夫/三つのジャポニズム
Toshio Mashima (1949-2016) // Les Trois Notes du Japon
出演者
演奏:洗足学園音楽大学 ブルー・タイ ウインド・アンサンブル
指揮:大澤 健一
★本公演はコロナ感染予防のため一般公開はしておりません。関係者対象の演奏会になります。



ハーツウインズ 第16回定期公演動画
吹奏楽合奏の基礎 動画公開
ベーシックバンドレパートリー研究会の動画を一般公開しましたので、是非ご覧ください。
また、チャンネル登録も宜しくお願いします。
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吹奏楽合奏の基礎
第一回 吹奏楽の始まり
第二回 ウインドアンサンブル
第三回 作品へのアプローチ
第四回 リハーサル、本番での心得
ハーツウインズ 第16回定期演奏会 プログラムノート 解説大澤健一
フレックス・メンデルスゾーン・バルトルディ:管楽のための序曲ハ長調 作品24
Felix Mendelssoohn Bartholdy :Overture fur Harmoniemusik in C dur op.24

メンデルスゾーン(1809-1847)はモーツアルト(1756-1791)と同じように幼少時から演奏や作曲を披露する才能あふれる神童と言われていました。代表作にはメンコンと呼ばれ親しまれる「ヴァイオリン協奏曲」やピアノ曲「無言歌」あります。また管弦楽曲では「夏の夜の夢」「フィンガルの洞窟」そして交響曲第3番「スコットランド」4番「イタリア」が人気があります。
生地ハンブルクから移動したベルリンの生活は、音楽的環境に非常に恵まれていました。自宅サロンには、当時の著名な文化人が良く招かれて集まっていました。その家庭の様子は「ヨーロッパが彼らの居間にやって来る」と言われたほどです。そして両親が組織する私設の管弦楽団のために、12歳から14歳の間に12曲の「弦楽のための交響曲」を書いています。15歳になると管弦楽編成の「交響曲第1番」を書き上げました。そして名曲「夏の夜の夢」序曲は16歳の時の作品です。あまりの早熟な音楽経歴ですが、12歳頃の肖像画を見るとその美少年ぶりに再度驚きです。

神童フェリックス君の音楽の礎になっているのは、大叔母ザラ・レヴィの存在があるとされています。ザラは大バッハの息子W.F.バッハに師事した鍵盤楽器奏者でバッハの楽譜研究家でした。ザラはバッハ「マタイ受難曲」の写譜スコアを彼の14歳のクリスマスプレゼントとして贈ります。神童フェリックスは、このスコアを大切に研究し、20歳の時にベルリンにてマタイ受難曲の公開演奏会を行いました。これはバッハ死後一世紀あまりも忘れられ演奏されていなかった名曲の復活となる偉業でした。
さて、メンデルスゾーン家は父が銀行家で、大叔母や姉は鍵盤楽器奏者という恵まれた環境でしたが、夏の避暑旅行の温泉場で初めて耳にした管楽の編成と音楽に大変に興味を抱きました。帰宅してから同じ編成ですぐさま書き上げた曲が、今回演奏する序曲です。交響曲1番と同じ15歳の作品です。モーツアルトもドイツ旅行中にマンハイムでクラリネットの音に初めて出会い魅了された記録があります。 序曲ハ長調は、モーツァルトのセレナーデ10番(13管楽器によるセレナーデ)と同様に純音楽としての管楽合奏の貴重な作品です。
原曲版スコア

原曲スコアでは現在一般に使われなくなった時代楽器(古楽器)があります。
Clarinetti in F, ヘ長調クラリネットClarinetti in C,ハ長調クラリネットCorni di Bassett バセットCorno Basso (Ophicleide)オフィクレイドこれらは現在では順にE♭Clarinet、B. Clarinet、Bassett horn or Alto Clarinet、Tenor tuba or Eurphoniumで演奏します。また原曲は24人編成です。時代楽器による演奏の特徴は、現代の進化した楽器では出せない素朴な音質、ニュアンス、音量にあります。これを正確に再現するには木管、金管、打楽器すべてを時代楽器で揃えなければなりません。また演奏会場は木造建築で100~200席が理想でしょう。
本日使用楽譜は、Felix Greissleによる吹奏楽版ですが、さらに私が手を加えた形で演奏いたします。若干15歳の作品は若さに溢れた瑞々しさとバロック、古典音楽を充分に踏襲した音楽として現代に蘇ります。

グスタフ・ホルスト:吹奏楽のための第1組曲変ホ長調/吹奏楽のための第2組曲へ長調
Guatav Holst : First Suite in E♭for Millitary Band op.28 no.1/Second Suite in F for Millitary Band op.28 no.2

20世紀初頭のイギリス軍楽隊におけるレパートリーはファンファーレや行進曲、管弦楽曲の編曲などに限られていました。そこで1909年に陸軍音楽学校の司令官から自国の作曲家による質の高い楽曲の要望がありました。当時ホルスト(1874-1934)はトロンボーン奏者としてオーケストラや市民吹奏楽団で活動していたことから、吹奏楽に興味があったため作曲を行ったと言われています。
さて、この二つの組曲の自筆譜の所在が1970年まで不明であった為、今日まで様々な版が存在しています。クラシック名曲といわれるものでは、原典版、校訂版など同じ曲でも数種類の楽譜が存在すること多々ありますが、吹奏楽一番の名曲もそうであったわけです。
1.自筆譜。1970年まで不明。現在大英博物館所蔵。
2.1921年版:コンデンススコアとパート譜のみ。フルスコア無し。

3.1948年版:アメリカスクールバンド用に編成が拡大される。アルトクラリネット、フリューゲルホルンが追加された。バリトン(金管)が省かれる。

4.1984年版:イギリス作曲家ホルスト研究家コリン・マシューズによる校訂版。アーティケレーションの見直しがされたが、自筆譜に無いバリトンサックス、バスサックスが追加される。ホルストの娘イモンジュ(指揮者)も参与。マシューズはホルストの代表作「惑星」の追加曲として冥王星(1930年に発見されたが、2006年に準惑星に変更)を作曲している。

5.2005年版:吹奏楽の巨匠フレデリック・フェネルの解釈を基にしたLudwig社版。ホルスト組曲の演奏とレコーデイングは最多であり、独自の演奏解釈(アーティケレーションの付加)から、ホルスト作品をこよなく愛する姿勢が伝わる。

6.2013年版:日本人作曲家、伊藤康英氏による原典復刻版。大英博物館所蔵の自筆譜を基に今までの経緯を踏襲し、新たな楽譜(第2組曲に未公表だったMarchを追加)を揃えた校訂版。

今回の演奏は4~6版を参考にしていますが、特に私が共演経験した生前のフレデリック・フェネル指揮での実演奏によるところが大きいです。
First Suiteの魅力は、その見事な主題の展開手法です。1楽章冒頭のシャコンヌのテーマは16回繰り返されますが、その一つ一つは見事な変化を展開します。このテーマは2楽章インテルメツォへ継承され、軽快で快活な新たな音楽として生まれ変わります。さらに3楽章Marchでは、主題音形の提示から伝統的なブリティシュスタイルバンドへ展開し、中間部の威風堂々とした愛国歌を彷彿とさせる旋律に発展し、さらに壮大な終結へ導きます。シャコンヌにおける主題の展開を印象付けるために全楽章休みなしで続けて演奏することが、指示されています。
Second Suiteの魅力は、全てイギリス民謡からできている事です。2歳年上だった最も親しい作曲家ヴォーン・ウィリアムス(イギリス民謡組曲、グリーンスリーブス幻想曲などが有名)の強い影響で、自国の民謡を収集して作曲したのです。これは後の吹奏楽作曲のお手本となりました。ゴードン・ジェイコブ(ウィリアムバード組曲)やP.グレインジャー(リンカーシャの花束)などに継承されました。
1.March 舞曲(Morris Dance)と4つの民謡からできている。1.Glory Shears、2.Blue eyed stranger, 3.SwanseaTown,(歌詞参照) 4.Claudy Banks。
2.無言歌 Song without Words ‘I’ll Love My Love’ 結婚を反対された少女の、理不尽を悲しむ恋歌 。
3.鍛冶屋の歌 The Song of Blacksmith 元気な鍛冶屋の歌。男声コーラス「6つの民謡合唱曲」にSwansea Town, I’ll Love My Love とともに含まれている。
4.ダーガーソンによる幻想曲 ‘Fantasia in the ‘Dargason’ ダーガーソンという古い循環旋律(26回反復)とイングランド民謡グリーンスリーブスを感動的に重ねた曲。後に弦楽合奏曲(セントポール組曲)として単曲で発表した本人お気に入りの曲。
6つの民謡合唱曲から歌詞を抜粋
Swansea Town ああ元気でいておくれ僕のナンシー 何度も何度もさよならを言うよ 僕は海原をまた越えていく 愛しているのは君だけだだ 希望はすてない 懐かしのスワンシータウンに帰ってくるよ
I Love My Love 戸外を歩く春の夕暮れ 病棟からは 少女の悲しい声 手を鎖に繋がれて、こう言ったのだった 「あの人を愛しているわ だって私はわかるの あの人が私を愛していること」
The Song of Blacksmith 鍛冶屋がわたしに声をかけてきた 9か月もよ 彼は私のハートに勝ったの 手紙を書いてきた 手には金づち 力強く巧みに 体中に火花をちらして

ショスタコーヴィチ:ステージオーケストラのための組曲から March WaltzⅡ DanceⅠ
Dmitri Shostakovichi:Suite of Variety Stage Orchestra

20世紀ロシアを代表する作曲家の一人ドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906-1975)は、15の交響曲や歌劇、バレエ、映画などに作品を残しています。若いころからその音楽的才能をいかして、早い時期から作曲、演奏活動を行っていました。勤労学生のころは映画館のスクリーンに合わせてピアノを即興で弾く仕事など生活のために行っていた事もあります。彼の回顧録(ショスタコーヴィチの証言)には、ロシア音楽を支えていた大作曲家グラズノフやリムスキー・コルサコフ、そしてストラヴィンスキーまた同期だったプロコフィエフなどが出てきますが、コルサコフ以外は自由を求めて亡命しています。当時のロシア政府はスターリンによる共産・社会主義(恐怖政治や全体主義)のため芸術文化にも厳しい規制がありました。特に西側で流行っていた前衛芸術は批判の的でした。18歳で書いた交響曲第1番の成功で若くしてその才能が認められていたショスタコーヴィチでしたが、つにに30歳の時に発表した「ムツェンスクのマクベス夫人」楽劇が前衛的だと政府機関の厳しい批判にさらされます。この楽劇はスターリン死去するまで上演できず、また同時期に書いた交響曲第4番は同じ運命をたどりました。この事件から体制に認められる作曲活動になるのですが、ショスタコーヴィチの凄い所は一見ロシア政府を称賛しているようでいて、その音楽的内容は奥深く意味深く、実はその逆を訴えるという、天才作曲家のなせる業で第5番以降の交響曲を発表しました。社会主義ロシアが起こした数々の革命戦争による犠牲者への鎮魂歌を書くことが、彼の音楽家としての使命だったのです。「私の交響曲は墓標である」(回顧録より)
さて、20世紀初頭のヨーロッパ音楽は、フランスパリがその栄華を誇っていましたがそういった西側の文化に敏感だったのはロシアの若き作曲家も同様です。そこにはアメリカの作曲家ガーシュインによるJazzを取り入れた魅力的な新しい音楽が流行っていました。ラヴェルやストラヴィンスキーもガーシュインに強く影響されています。ロシアでの大衆音楽(ミュージックホール、ダンスホールなどの娯楽音楽)についても、政府機関が干渉するのでショスタコーヴィチは、お手本になるような音楽を書くことになります。本来のジャズの要素としてのシンコペーション、ブルーノート、スイングは使わずに書かれました。マーチやポルカの様な形式です。当時の社会主義国家における粛清の日常に、幸せで明るい希望を感じることのできるように書かれたのでしょう。コロナ禍で疲弊した社会にも必要ですね!ショスタコーヴィチ様ありがとう♡
Jazz組曲2番は、全8曲からなる組曲ですが、今夜はその中からMarch、WaltzⅡ、DanceⅠの三曲を演奏いたします。オリジナルでは、アコーディオン、ピアノを使用しますが、本日は吹奏楽だけの編成版になります。

ハーツウインズ公演決定!
コロナ禍で殆どのコンサートが中止に追い込まれましたが、やっと9月30日に杉並公会堂大ホールにてコンサート開催が決定しました。プログラムは、こんな時だかこそ原点回帰で、メンデルスゾーンの序曲、ホルスト第1組、第2組を演奏します。またショスタコヴィッチのジャズ組曲2番からダンスとワルツを演奏します。私のトーク付き指揮になります。きっと楽しい有意義な時間になると信じております。

ジョージ・ワシントンブリッジ
7月7日に予定されていたコンサートの冒頭で演奏する予定だった、ウィリアム・シューマンのジョージ・ワシントンブリッジのイメージ画を製作しました。
