ハーツウインズinキラリ☆ふじみ

2024年3月23日クリニック 3月24日コンサート


吹奏楽のはじまり…素敵な名曲たち…
そして、新しく変化する吹奏楽の魅力…
ウインドアンサンブルの名曲を紹介し、吹奏楽の楽しさをお届けする楽団・ハーツウインズが、キラリふじみで初めてのコンサートを行います。ハーツウインズが紡ぐ名曲の数々と、指揮者・大澤健一さんのお話で、吹奏楽の歴史を旅します。
ハーツウインズとの合同合奏に参加するメンバーも募集します。
「演奏を聴く」「演奏をする」それぞれの方法で吹奏楽の魅力にぜひ触れてみてください。

演奏:ハーツウインズ
音楽監督・指揮:大澤健一

■コンサート■

プログラム(予定)
音楽祭のプレリュード/アルフレッド・リード
吹奏楽誕生のお話
吹奏楽の為の第1組曲/グスタヴ・ホルスト
祝典のための音楽/フィリップ・スパーク
マードックからの最後の手紙/樽屋雅徳
スピリティッド・アウェイ《千と千尋の神隠し》より/久石 譲・木村 弓(森田一浩)
[合同合奏] アルセナール/ヤン・ヴァンデルロースト
[合同合奏] アフリカンシンフォニー/ヴァン・マッコイ

日時:2024年3月24日(日)14:00開演(13:30開場)
会場:富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ メインホール
料金:(全席自由)一般2,500円 高校生以下500円
    ※未就学児の入場はご遠慮ください。

チケット発売開始:2024年1月27日(土)

■クリニック■

合奏曲:「アルセナール」(ヤン・ヴァンデルロースト)
    「アフリカンシンフォニー」(ヴァン・マッコイ)
日時:2024年3月23 日(土)13:00~17:00|24(日)午前中:リハーサル/午後:本番
会場:キラリ☆ふじみ館内施設
募集楽器:①フルート ②オーボエ ③ファゴット ④クラリネット
⑤サックス(アルト、テナー、バリトン) ⑥トランペット ⑦ホルン 
⑧トロンボーン ⑨ユーフォニアム ⑩テューバ ⑪コントラバス 
⑫パーカッション
人数:各パート若干名。(応募者多数の場合は抽選)
対象:中学生以上の吹奏楽経験者。
   楽器持参(打楽器は除く)ができる方。
   3月24日(日)のコンサートでハーツウインズメンバーと演奏したい方。
参加費:一般2,500円 中・高校生500円
申込方法:・申込専用サイトからこちら
     ・専用の申込用紙をご記入のうえ、直接来館または郵送。

主催:公益財団法人キラリ財団
助成:文化庁 文化芸術振興費補助金 劇場・音楽堂等活性化・ネットワーク強化事業(地域の中核劇場・音楽堂等活性化事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会

お問い合わせ:富士見市民文化会館キラリふじみ 049-268-7788

ハーツウインズ第19回定期演奏会

2023年9月28日(木) 19時開演

小金井宮地楽器大ホール

演奏:ハーツウインズ  指揮:大澤健一

⚫︎ジェイガー/シンフォニアノビリシマ

⚫︎バッハ/編曲:伊藤康英/ウインドアンサンブルの為のシャコンヌ

⚫︎ネリベル/二つの交響的断章

⚫︎後藤洋/ウインドアンサンブルの為のソングス

⚫︎ティケリ/交響曲第2番

詳細https://heartswinds.mystrikingly.com/

プログラムノート

ハーツウインズ2023年9月28

こんばんわ。指揮の大澤です。

本日のコンサートご来場まことにありがとうございます。

コンクールシーズンも落ち着き、後は全国大会を残すまでになりました。今年も各地では、小中高生、大学生、一般大人まで実に数十万人もの人々がコンクールに参加、熱い演奏を繰り広げました。日本は世界一の吹奏楽国!!

さて、吹奏楽作品では、作曲者がまだ健在で同時代を活躍していることが多いです。ですから、本人の作品を演奏するときは、作曲家の生身の意見を聞くことができます。

しかし、人間の儚き宿命で別れに接することもあります。日本を代表する世界的な作曲家、西村朗さんの訃報(9月7日享年69才)は、あまりにもショックでした。彼の管弦楽作品は私が東京シティフィル在籍時に演奏したことがあり、同期という事で親しみを感じておりました。そして西村氏は貴重な吹奏楽作品を残しています。課題曲にもなりましたが、「秘儀」という題名で日本人のアイデンティティを表現した作品です。これは、浜松星聖高校の土屋史人先生が長年に渡り、このシリーズをコンクールで取り上げて新たな吹奏楽の可能性を切り拓きました。そこには、作曲家と指導者の尊い信頼関係を感じます。ハーツウインズではまだ演奏していませんので、必ず!と思っております。

ロバート・ジェイガー/シンフォニアノビリシマ

ジェイガー(1939ー)はアメリカの作曲家、音楽教育者、指揮者。テネシー工科大学の作曲科教授。1978年に来日して東京佼成ウインドを指揮しています。私はその時Tuba奏者として参加していました。幸運にも何度か食事に同席させてもらいました。この来日では新作のTuba協奏曲がメインプロでした。ソリストに元世界TUBA協会会長のウインストン・モーリス氏が同行しました。二人ともユーフォニアム奏者の三浦徹氏と大変に親しく、私も同行させてもらった次第です。古い話ですが、この楽しい時間は鮮明に記憶に残っています。

シンフォニアノビリシマ1965年の作品で、ジェイガーが結婚した当時の幸福な生活と希望に溢れた未来を表現しています。ノビリシマとはイタリア語で「高貴な」。邦題は、吹奏楽のための高貴なる楽章。スコアDからの低音主題は、将来に希望を抱く新婚二人のテーマ。中間部Iからは奥様との愛を歌い上げた壮大なラブソング❤️ 彼曰く、「若い頃の話だよ」。写真の通りで、とても陽気で、好奇心の強いお茶目なお方という印象でした。おトイレ行く時は“Square Banjo“と連呼していました。

愛のテーマ

代表作    交響曲第1番、第2組曲、第3組曲、ダイヤモンドバリエーションズ、ロベルト・シューマンの主題による変奏曲、黙示録、交響曲第2番「三法印」、ジュビラーテ、Tuba協奏曲、吹奏楽のための協奏曲、ヒロイック・サーガ、第1組曲、Mystic Chords Of Memory他。2018年には交響曲第3番を発表。現在84歳で活躍中。

普門館の壁際に、映り込んでいました。CDジャケットより

バッハ編曲:伊藤康英ウインドアンサンブルのためのシャコンヌ

大バッハの歴史的な有名曲を吹奏楽に編曲する。これは重要で貴重なチャレンジです。この大仕事を日本で一番忙しい?信頼できる!作曲家、伊藤康英氏が完成させました。伊藤康英氏の全ての音楽知識と才能によって、バッハのシャコンヌが吹奏楽作品として新たなる生命が与えられたのです。

彼の代表作「ぐるりよざ」は日本の吹奏楽作品として世界的レパートリーなりましたが、すでに100曲を超える吹奏楽作品があります。素晴らしい実績です。また他に器楽曲、声楽曲、管弦楽、オペラなど幅広いジャンルの作品があり現在の日本を代表する作曲家です。現在、洗足学園音楽大学教授として作曲、指揮、講習などで日本中で活躍しています。

作曲者自身の楽曲解説から

ウィンド・アンサンブルのためのシャコンヌ(2017年版)

1988年に抜粋版を作ってから30年近くたち、ようやく全曲版編曲完成と相成った。バッハの「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調BWV 1004」の終曲を飾る「シャコンヌ」は、多くの作曲家を刺戟し、J.ブラームス(1833-97)の(左手のみによる)ピアノ編曲、はたまた斎藤秀雄(1902-74)によるオーケストラ編曲など、さまざまな編曲がある。とりわけ、F.ブゾーニ(1866-1924)によるダイナミックなピアノ編曲は、バッハ作品の再創造として、広くレパートリーとなっている。そう、それこそが「編曲」なのだ。原曲の持ち味からの新たな創造。ならば、吹奏楽ならではの色彩を生かしたものが作れないか、と考えたのがきっかえだった。冒頭部分はトロンボーンのアンサンブルで、と、畏友である渡部謙一氏(現・北海道教育大学)の一言でアイディアがわき、ブゾーニ版を参考にしつつシェーンベルクの音色旋律ふうな処理による細かいオーケストレイションを施した。

なお、この作品はほぼ黄金分割比で成り立っている。最初の短調部分と続く長調部分の比、そして、その長調部分と最後の短調部分の比、これらが黄金分割に近い。(したがって、長調部分に入る段階でほぼ半分)。1988年版は、各部分をさらにほぼ黄金分割比に従ってカットしたものであった。4小節を単位として数えると全部で34回。原曲は64回。ただし今回の版は「全曲」版ではありながら、分割比を保つために若干のカットを施し、全部で61回とした。

ヴァーツラフ・ネリベル/二つの交響的断章

世界第2次大戦の戦禍に翻弄された作曲家ヴァーツラフ・ネリベル(チェコ出身1909-1996)幼少期は礼拝音楽で育ち12歳でオルガニストを務め、作曲、理論を早くから習得。チェコ大学とプラハ音楽院で優秀な成績で音楽を学びました。しかし戦禍のナチスドイツの強制から逃れるためスイスで作曲活動をします。ネリベルはヨーロッパにおいて管弦楽曲、バレエ曲、オペラ、室内楽の作曲家として認められ楽譜も出版されます。やがて帰国を希望してプラハで音楽活動をします。しかしドイツ敗戦後ソ連共産主義に支配されるプラハでは自由に音楽活動が出来ません。西側の理解者の協力を得て、音楽の仕事を安全に継続するために渡米します。

1957年アメリカに移住し大学で教鞭をとりながら音楽の仕事を行います。1963年ある出版社の勧めで、音楽教育者会議の全米大会を見学、大学生が演奏するパーシケッティ作曲の『ページェント』を聴いて触発され、すぐに吹奏楽に興味を抱きます。最初に初心者が演奏することを想定した教育的な作品を発表。それがきっかけで第一線のバンド指導者たちから作曲の委嘱が始まり、1965年《コラール》《トリティコ》《シンフォニック・レクイエム》、66年《プレリュードとフーガ》《交響的断章》などの個性的で優れた作品で吹奏楽界に衝撃的なデビューを果たしました。これらは現在人気作品として世界中で演奏されています。特に「交響的断章」の人気が高く、全米中の学生バンドで演奏されている事を知ったネリベルは、さらに高度なテクスチュアを使ったウインドアンサンブル作品1969年《二つの交響的断章》 を発表。ネリベルはこれらの功績により1978年全米吹奏楽協会が吹奏楽のオスカー賞として設定した吹奏楽アカデミー賞を受賞しました。80年代には、さらに高度な技術を要する楽曲《復活のシンフォニア》《クロノス》《カントゥス》などを発表しました。

ネリベルの個性的なリズムやハーモニー音楽のルーツはプラハで培わられた教会音楽やヨーロッパ土壌にあります。自分が生まれた土地、その環境から作品が生まれるのですね。

作曲者の楽曲解説

この楽曲は、対照的な二つの楽章から構成されており、すべての主題的要素は、第1楽章の冒頭で提示される以下の4音からなる動機に基いている。

第1楽章は、基本的に遅いテンポで進行し、主題が演奏される場面と木管楽器の独奏を中心とする場面とが交互に表れる。独奏部分は、主要主題に由来するものではなく、自由で即興的に展開される。

後藤 洋ウインドアンサンブルの為のソングス

ウインドアンサンブルとは、各パートは一人の奏者、重複しない編成のアンサンブルの事。これにより各奏者の音色、ニュアンスが生かされた演奏が可能になる。フレデリック・フェネル博士が1950年代に提唱し、イーストマン・ウインドアンサンブルによる作品の紹介と演奏で貴重な録音を残しています。現在までに彼の提唱に呼応した米国の作曲家によるウインドアンサンブル作品が多く書かれました。ロン・ネルソン、シュワントナー、ギリングハム、ドアテイ、ティケリ、レイノルズ、マクティ。後藤洋氏もその一人ですが、シンディ・マクティなど米国作曲家の元で研鑽を積み、現在は昭和音楽大学教授としてウインドアンサンブル作曲と音楽教育を専門として活躍しています。日本管打・吹奏楽学会にて2000年度吹奏楽アカデミー賞(研究部門)を受賞。

ウインドアンサンブルの為のソングスは2011年ABA(米国吹奏楽指導者協会)にて日本人初のオズワルドを受賞しています。

作曲者の解説から(2010年出版解説より)

さまざまな方向からさまざまな異なった音楽が聴こえてくる、そんな音楽体験を目指した曲を、ここ数年書き続けています。『バンド維新』のために書き下ろしたこの《ソングズ》もそのような作品のひとつで、バンドのメンバーひとりひとりがソリストとなって、シンプルな旋律を(あるいはその断片を)自由に奏で、それらが立体的に重なり合うことをコンセプトとしています。

これは奏者の個性を全体に埋没させて「ずれないように、はみ出さないように」合奏することを尊重しがちな、日本のアマチュア吹奏楽へのささやかな問題提起でもあります(もちろん、全員が終始ばらばらに 演奏するわけではなく、一緒になる場面もたくさんあるのですが)。さまざまな「ソング」は、実際には静と動の2種類。いずれも冒頭のクラリネットの旋律を 母体としています。これらの「ソング」が時に対比され、また時には重なり合いますが、最後まで完全に調和することはありません。

「ひとりひとりがソリスト」ですから、ひとつのパートをひとりずつ、合計24人で演奏されることを想定しています。

フランク・ティケリ交響曲第2番   

フランク・ティケリ(米国出身1958ー)現在南カルフォニア大学の作曲科準教授で、多くの人気吹奏楽作品があります。中でもJazzの要素を用いた作品ブルー・シェイズ、ワイルドナイツなどが有名で、私も過去に国立ウインズ、洗足ウインドシンフォニーなどで指揮をしました。

交響曲第2番は、2006年のウィリアム・D・レヴェリ記念作曲コンテスト(NBA全米吹奏楽協会開催のコンクール)でグランプリを受賞。また2021年の同コンクールにて、永遠の光(Lux Perpetua)がグランプリを受賞しています。このコンクールでの過去の主な受賞曲:コルグラス/ナグアルの風、ネルソン/パッサカリア、グランサム/サザンハーモニー、スパーク/宇宙の音楽、マッキー/オーロラの目覚め、ワインダークシーなどが有名です。

ティケリの音楽の源は何だったのでしょう、インタビューに答えた記事から

「幼少期にニューオリンズで伝統的なジャズに触れたことが、初期の大きな影響となりました。それ以来、影響を受けたものは枚挙にいとまがないほどです。」

作曲者の解説から

交響曲の 3 つの楽章は、天上の光、月、太陽を表しています。

第1楽章「流れ星」Shooting Starsのタイトルは完成後に付けられたものですが、創作の過程ではずっとそのような色の瞬きを想像していました。白鍵音のクラスターが、明るい光の筋のように、いたるところに散りばめられています。Ebクラリネットがメインテーマを叫び、低音の金管がスタッカティッシモの和音を打ち出し、ダンスのような躍動感があります。さまざまな種類の一瞬の出来事が予期せぬ瞬間に切り貼りされ、耳を釘付けにします。この動きは急速に燃え上がり、ほとんど跡を残さず爆発的に終わります。

第2楽章「新月の夢」Dreams Under New Moonは、一種の魂の旅を描いています。ブルージーなクラリネットのメロディーに、ミュートのトランペットとピッコロによる聖歌のようなテーマが応えます。神秘的なものから暗いもの、平和で癒しのものまで、さまざまな夢のエピソードが続きます。上昇するラインが楽器から楽器へと受け継がれていくにつれて、希望の感覚が主張し始めます。音楽が高揚し、変調に次ぐ変調が発生します。終わり近く、主題が聖歌と対位法で戻り、壮大なクライマックスを迎え、その後穏やかなコーダに落ちます。最後の変ロ長調コードは、疑問を投げかけるような変ロ長調によって彩られています。

3楽章「解き放たれたアポロ」Apollo Unleashedは、壮大な楽章であり、言葉で伝えるのが最も難しい楽章です。古代の太陽神であるアポロンのイメージは、タイトルだけでなく、その燃えるようなエネルギーにもインスピレーションを得ました。明るい響き、速いテンポ、疾走するリズムが組み合わさって、交響曲のフィナーレに相応しい緊迫感。その一方で、崇高なバッハのコラール BWV 433 (Wer Gott vertraut, hat wohl gebaut) によって和らげられ、音楽が豊かになります。このコラールは私のお気に入りであり、精神的な支えとして音楽に魂を与えます。

ハーツウインズ第18回定期演奏会




プログラムノート

吹奏楽のための変奏曲作曲:レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ編曲:ドナルド・ハンスバーガー

レイフ・ヴォーン・ウィリアムズRalph Vaughan Williams, 1872年10月12日-1958年8月26日) イギリス、グロスターシャー州ダウンアンプニー出身の作曲家。ロンドンの王立音楽大学で作曲を学び、在学中にホルストと知り合い親交を深める。民謡の採集や教会音楽の研究を通して独特の作風を確立し、イギリス人による音楽の復興の礎を築いた。イギリスの田園風景を彷彿とさせる牧歌的な作風は、広くイギリス国民に愛されている。

今年が生誕150年というヴォーン・ウィリアムズの代表作品と言えば、グリーンスリーブスをあげる方が多いと思う。この曲は16世紀頃のイングランド民謡として古くから歌われてきた歌。彼はこの楽曲を使って自作のオペラ「恋するサー・ジョン」の間奏曲「グリーンスリーブス幻想曲」を作曲したが、独立した楽曲として彼の最もポピュラーな作品として世界中で親しまれている。

イングランド、スコットランドは民謡の宝庫で様々な楽曲が今日でも歌い続けられてきている。これら民謡を題材にしてヴォーン・ウィリアムズは「イギリス民謡組曲」を軍音楽隊に提供し、親友のグスタフ・ホルスト「吹奏楽のための第2組曲」を書いた後にパーシー・グレンジャー「リンカーンシャの花束」というイギリス民謡集を書いている。どれもイギリス吹奏楽の名曲として親しまれている。ポップスの世界でも、ビートルズ、エンヤ、エド・シーランなど多くのミュージシャンがスコットランド、イングランド、アイルランド地方の民謡を題材にして世界的ヒットを書いている。16世紀のイングランドというと、政略結婚を6回も行ったヘンリー8世が有名であるが、「グリーンスリーブス」は王妃アン・ブーリンのために作曲されたという興味深い説もあるが真意は不明。イギリス長編ドラマ「The Tudor」では当時の模様が忠実に描かれていてこの時代を知るには大変お薦め。

さて、イギリスというとその穏やかな田園風景が印象的である。日本と同じ島国で気候も似ており四つの季節もある。特に野山の稜線は柔らかく、沼地が点在する風景に魅了される。ヴォーン・ウィリアムズの音楽には、この風景と自然が感じられる。さらに我々日本人にとても共感できるものがある。多分に音階がそう感じさせている。西洋音階の4番目と7番目の音を抜いた、ヨナ抜き音階(ドレミソラ)の日本音階はスコットランド民謡にも多く出てくる五音音階と同様である。ヴォーン・ウィリアムスはこの音階をよく使う。今回の変奏曲の冒頭に出てくる主題が正にそうである。

冒頭は五音音階で始まる。ドーレミソラーそれはまるで堂々とした山並みでありそれに続く変奏は、大自然の様々な姿を表現している。明るい田園や雲の流れ川の流れの風景だ。それは作者の自然に対する「畏敬愛」であり、同時に晩年を迎えた彼の充実した「人生」が変奏として脈々と語られているようだ。やがてそれは実直に力強く幕を閉じる。ヴォーン・ウィリアムズは生涯9曲の交響曲を書いたが、海の交響曲(第1番)、田園交響曲(第3番)、南極交響曲(第7番)にあるように大自然をテーマにした交響曲がある。

「吹奏楽のための変奏曲」の原曲はアマチュア金管バンドのコンテスト用に1957年に作曲されたが最晩年に金管バンドのために書いていることが興味深い。民謡と宗教音楽に造詣が深く、また教育者として学術研究書も多く発表されていることから、多くの一般市民が親しむ金管バンドへ「質の良い音楽」を提供したのは頷ける。後に弟子のゴードン・ジェイコブが管弦楽用にイギリス民謡組曲とこの曲を編曲しているが、管弦楽曲としても見事な音楽が展開される。いずれにしても、最晩年に書かれた「吹奏楽のための変奏曲」はヴォーン・ウィリアムズの集大成に相応しい音楽であることは、今夜の演奏で明らかになるであろう。

今回演奏する吹奏楽版の編曲者ドナルド・ハンスバーガーは元イーストマンウインド・アンサンブルの指揮者で、日本にも何度も来日している。自身がイーストマン・ウインドアンサンブルのユーフォニアム奏者出身であったことから、私個人として来日の度に親交を深め、ウインド・アンサンブルについて様々なアドヴァイスを頂いた。通常の編成にないアルトフルートやピッコロトランペットが使われており、そのこだわりが興味深い。

イギリス風景画家の作品から「乾草の車」ジョンコンスタブル1821年

交響曲第2番/ジョン・バーンズ・チャンス

ジョン・バーンズ・チャンス(John Barnes Chance、1932年11月20日 – 1972年8月16日)は、米国テキサス州ボーモント生まれの作曲家。ボーモント高校のバンドとオーケストラでティンパニーを演奏している頃から作曲を志しテキサス大学にて、クリフトン・ウィリアムズ(ファンファーレとアレグロ、交響組曲で米国吹奏楽作曲賞ABA第1回第2回受賞者)に作曲を師事する。大学ではフランシス・マクベス(作曲家)と親交があったが、彼らとの3人組はオーステインスリーと云われていた。しかし当時の学生たちのヒッピー風潮に影響され、大学授業に欠席が多く一度退学している。(共感できる)最終的にはテキサス大学へ復学し修士号を得ている。(やはり志を捨てない)大学やオースティン交響楽団でティンパニ奏者として活動した後、1957年米陸軍軍楽隊の専属編曲者として活動。その一年後、朝鮮戦争の最前線の第8軍隊に、強制的に派遣される。この陸軍の決定に猛烈に文書で抗議したがその要求は拒否されている。しかしこの韓国での経験とインスピレーションは1965年に発表されて見事ABAを受賞する「朝鮮民謡の主題による変奏曲」に繋がった。1960年陸軍を除隊し、フォード財団のプロジェクト若手作曲家に選出される。この時代に多くの教育的な作品を発表している。その業績が認められ1966年ケンタッキー大学にて教鞭をとり1971年に作曲、理論の主任になる。しかしその翌年、自宅庭にて愛犬を隔離するための電気柵を作成中に200ボルトのワイヤーが原因で感電事故を起こし急死した。39歳での他界は、あまりも突然の悲報であった。将来を期待された若き作曲家の作品は、教育的な作品が有名で『呪文と踊り』、『朝鮮民謡の主題による変奏曲』、『ブルーレイク序曲』などは若い奏者が取り上げる作品として人気がある。

吹奏 楽 と 打楽器 の ため の 交響 曲 第 2 番 は、 チャンス が グリーンズボロ に い た 頃 の 吹奏 楽 の ため の 初期 の 交響 曲 に 基 づい た作品です。彼 の師クリフトン・ ウィリアムズ は、 それぞれ が 4 音符 の モチーフ C#- D- F-Fで 作品 を 書く こと に 賛成しました。1962 年 2 月、 チャンス は 1楽章の テープ を ウィリアムズ に 送り ました。しかしウィリアムズはさらなるアイデアが必要だと伝えました。10 年 後、ノース ダコタ 州 北西 音楽 センター が 彼 に Minot State College Wind Ensembleの為 の委嘱を依頼してきました。彼は10年前のこの未完成曲に手を加え、緩徐セクション と コーダ を 追加 し、 彼 の 元 の アイデア( 3楽章Slancio) を完成させ依頼 を 完了 し まし た。しかし不慮の事故により残念 ながら、 彼 は 完成 し た 作品を聴く事はできなかった(何という不運か)(CD. The Legacy John Barnes Chance より)

第1楽章Sussuradoスッスランド(ささやくように、つぶやくように)モチーフ C#- D-F-Eを繰り返し再現しながら展開させていくソナタ形式。C#- D-F-Eが「ささやかれ」て、楽器が少しずつ増えてゆく展開こそ交響曲作品である!といった教育的な配慮があると思う。一つのテーマを自由に発展させそれをソナタ形式で完結させる手法を、演奏者に分かり易くさらに音楽性に富み興奮と驚き、興味を持たせるように書かれている。テーマは長くては覚えられない、単純なほど展開の可能性が多くなる。かの名曲ジャジャジャジャーンの様に。時には何方かのイニシャルを使ったり、チャンスのC#- D- F-E(ド♯ーレーファーミー)は、きっとあなたの頭に巣作ってしまうだろう。そのまま2楽章、3楽章に変化する17分間のトリップを楽しんでもらおう。

第2楽章Elevatoエレヴァート(気品をもって、気高く)バスクラ、コントラバスクラとトロンボーンのペダルトーンによるB♭音上にクラリネット、ホルンによるゆったりした深淵の響きが拡大していく。深い沼の底から水面を見るようなミステリアスな世界が表現される。やがてその静寂に、テーマC#- D- F-Eを反転させたD-C#- E-Fの素早い音形が信号のように繰り返されアタッカ(次の曲へ休みなしで進む)で3楽章へ進む。

第3楽章Slandoズランチョ(突進、勢い、情熱)全楽章の発想記号は、あまり使用されない楽語だが、チャンスのこだわりが感じられる。この楽章は、テーマC#- D- F-E(ド♯ーレーファーミー)の終結といえよう。特にtimpani奏者であったチャンスの見事な管楽器と打楽器の掛け合いが印象的。また随所に彼が影響を受けた同時代の作曲家の手法が見ることができる。バーンスタインのウエストサイドが見えたり、特にウィリアム・シューマンのチェスターやジョージ・ワシントン・ブリッジにある木管セクションと金管セクションの掛け合い(私の大好きな所!)が、チャンスの見事な掛け合いに蘇っている。(ここ好きだ!)もっと長生きして沢山の名曲を書いて欲しかった作曲家、上品なお顔も2枚目で素敵でした、どんな作品が生まれたのだろうか。今年で没後50年、命日は真夏の8月16日。合掌。

酒井格/森の贈り物 Legacy of the Woods

1970年3月24日大阪生まれ。4歳からピアノを習い始め、6歳で最初のピアノ作品を作曲。高校時代では吹奏楽部でフルートを演奏、最初の吹奏楽作品「たなばた」を作曲する。1990年大阪音楽大学作曲科に入学し、千葉英喜、田中邦彦の両氏に作曲を師事する。1994年同大学を首席で卒業後、同大学院に進学1996年に修了。プロの吹奏楽団から、アマチュアバンドまで数多くの委嘱を受け新作を発表。選抜高等学校野球大会では2009年の第81回大会以降、入場行進曲の編曲も行う。

森の贈り物(2003年)作曲者の解説から〜日本の南西部、鹿児島県に屋久島という深い森に覆われた島があります。1993年にユネスコの世界遺産に登録されたこの森には、樹齢7200年といわれる縄文杉をはじめ、樹齢1000年を越える巨木が数多くあり、その佇まいは神々しく、神秘的ですらあります。古代から、島に住む人たちに大きな恵みをもたらしてきたこの森も、数十年前には木材需要の高まりにより、数多くの樹木が伐採され、森が失われる危機に見舞われたこともありました。しかし森の大切さを訴える人たちの、真摯な願いが叶い、現在では緑豊かな森が多くの人たちによって守られています。目をつぶって耳を澄ませると、鳥の鳴き声、水のせせらぎが聞こえ、私たちが生きるのに必要な美しい空気を作り出してくれる森。屋久島のような大森林でなくとも、そんな豊かな恵みを残してきてくれた多くの森がが、これからも私たちの手によって守られて行くことを願って、この作品を書きました。

森の精の歌声、森の長老の語り、森の生きもの達の行進、ある時は嵐に襲われる森ですが、嵐が去って美しい森の景色が広がる様子を、この曲から感じ取って貰えるでしょうか?

真島 俊夫/三つのジャポニズム Les Trois Notes du Japon

真島 俊夫(ましま としお)1949年2月21日 – 2016年4月21日)山形県鶴岡市出身。山形県立鶴岡南高等学校から神奈川大学工学部へ進学(吹奏楽団ではトロンボーン担当)。作曲家を志し和声法と作・編曲法を兼田敏に師事。全日本吹奏楽コンクール課題曲をはじめとする数多くの吹奏楽曲を作曲している。また1990年代より「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」にスコアを提供、代表的な編曲作品としては「宝島」「オーメンズ・オブ・ラブ」「チュニジアの夜」等がある。そして「ドラゴンクエスト」シリーズの全吹奏楽編曲を担当。吹奏楽界のジャズ・ポップスの啓蒙に努める。2006年、フランスのリールで開催されたクー・ド・ヴァン国際交響吹奏楽作曲コンクールに於いて『鳳凰が舞う』がグランプリを受賞。

三つのジャポニズムは、2001年4月27日にダグラス・ボストック指揮の東京佼成ウインド・オーケストラにより初演され、その後ヨーロッパやアメリカでも多くのバンドによって演奏されている。以下作曲者自身による解説。

「鶴が舞う」は丹頂鶴の求愛の踊りである。丹頂鶴は頭頂部の赤と一部の黒い羽が全体の白い羽とのコントラストを見せて美しい。そして雄がコーと一声鳴くと、雌がコーコーと答える。途中、鶴の羽ばたきと鳴き声の描写が入る。

2.雪の川 La rivière ennegee

「雪の川」は冬の峡谷を静かに流れる川に、雪がしんしんと降り続ける墨絵のような光景を描写した。

3. 祭り La fete du feu

「祭り」は激しい夏祭りを描写で、いろいろな祭りのリズムが目まぐるしく登場する音のコラージュになっている。中間部は夏の炎天下、青空に入道雲が出ている日本の夏の光景だ。やがて遠くから聞こえてくる太鼓は、私が子供の時から親しんだ母の生まれ故郷、青森の「ねぶた」のリズムである。

●1楽章の鳥の羽音は、団扇か扇子と手を打ち合わせて出して下さい。丁度、焼き鳥か鰻の蒲焼きを焼くときの要領です。

●2楽章の「竹鳴子」は手に入らないので自作をお勧めします。直径約2㎝、長さ20㎝位の竹の棒を20〜30本用意します。これらの上端に穴を開け、紐を通して板に吊るします。竹製のウインドチャイムと考えて下さい。2〜3列にすると鳴りが良いです。この下部を手のひらで左右に揺らすようにかき鳴らします。カラカラカラという音です。

●3楽章の桶太鼓のバチは竹の棒を使います。剣道の竹刀を分解して適当な長さにに切ったものを2本使うのが一番近いです。先で叩くのではなく、膨らんでいる中間部の面で打つ感じです。ドンではなく、バンッという感じです。最近は「ねぶた祭り」の動画もたくさんありますから、研究して下さい。(弘前の「ねぷた」ではなく、青森の「ねぶた」です。