ハーツウインズ第18回定期演奏会




プログラムノート

吹奏楽のための変奏曲作曲:レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ編曲:ドナルド・ハンスバーガー

レイフ・ヴォーン・ウィリアムズRalph Vaughan Williams, 1872年10月12日-1958年8月26日) イギリス、グロスターシャー州ダウンアンプニー出身の作曲家。ロンドンの王立音楽大学で作曲を学び、在学中にホルストと知り合い親交を深める。民謡の採集や教会音楽の研究を通して独特の作風を確立し、イギリス人による音楽の復興の礎を築いた。イギリスの田園風景を彷彿とさせる牧歌的な作風は、広くイギリス国民に愛されている。

今年が生誕150年というヴォーン・ウィリアムズの代表作品と言えば、グリーンスリーブスをあげる方が多いと思う。この曲は16世紀頃のイングランド民謡として古くから歌われてきた歌。彼はこの楽曲を使って自作のオペラ「恋するサー・ジョン」の間奏曲「グリーンスリーブス幻想曲」を作曲したが、独立した楽曲として彼の最もポピュラーな作品として世界中で親しまれている。

イングランド、スコットランドは民謡の宝庫で様々な楽曲が今日でも歌い続けられてきている。これら民謡を題材にしてヴォーン・ウィリアムズは「イギリス民謡組曲」を軍音楽隊に提供し、親友のグスタフ・ホルスト「吹奏楽のための第2組曲」を書いた後にパーシー・グレンジャー「リンカーンシャの花束」というイギリス民謡集を書いている。どれもイギリス吹奏楽の名曲として親しまれている。ポップスの世界でも、ビートルズ、エンヤ、エド・シーランなど多くのミュージシャンがスコットランド、イングランド、アイルランド地方の民謡を題材にして世界的ヒットを書いている。16世紀のイングランドというと、政略結婚を6回も行ったヘンリー8世が有名であるが、「グリーンスリーブス」は王妃アン・ブーリンのために作曲されたという興味深い説もあるが真意は不明。イギリス長編ドラマ「The Tudor」では当時の模様が忠実に描かれていてこの時代を知るには大変お薦め。

さて、イギリスというとその穏やかな田園風景が印象的である。日本と同じ島国で気候も似ており四つの季節もある。特に野山の稜線は柔らかく、沼地が点在する風景に魅了される。ヴォーン・ウィリアムズの音楽には、この風景と自然が感じられる。さらに我々日本人にとても共感できるものがある。多分に音階がそう感じさせている。西洋音階の4番目と7番目の音を抜いた、ヨナ抜き音階(ドレミソラ)の日本音階はスコットランド民謡にも多く出てくる五音音階と同様である。ヴォーン・ウィリアムスはこの音階をよく使う。今回の変奏曲の冒頭に出てくる主題が正にそうである。

冒頭は五音音階で始まる。ドーレミソラーそれはまるで堂々とした山並みでありそれに続く変奏は、大自然の様々な姿を表現している。明るい田園や雲の流れ川の流れの風景だ。それは作者の自然に対する「畏敬愛」であり、同時に晩年を迎えた彼の充実した「人生」が変奏として脈々と語られているようだ。やがてそれは実直に力強く幕を閉じる。ヴォーン・ウィリアムズは生涯9曲の交響曲を書いたが、海の交響曲(第1番)、田園交響曲(第3番)、南極交響曲(第7番)にあるように大自然をテーマにした交響曲がある。

「吹奏楽のための変奏曲」の原曲はアマチュア金管バンドのコンテスト用に1957年に作曲されたが最晩年に金管バンドのために書いていることが興味深い。民謡と宗教音楽に造詣が深く、また教育者として学術研究書も多く発表されていることから、多くの一般市民が親しむ金管バンドへ「質の良い音楽」を提供したのは頷ける。後に弟子のゴードン・ジェイコブが管弦楽用にイギリス民謡組曲とこの曲を編曲しているが、管弦楽曲としても見事な音楽が展開される。いずれにしても、最晩年に書かれた「吹奏楽のための変奏曲」はヴォーン・ウィリアムズの集大成に相応しい音楽であることは、今夜の演奏で明らかになるであろう。

今回演奏する吹奏楽版の編曲者ドナルド・ハンスバーガーは元イーストマンウインド・アンサンブルの指揮者で、日本にも何度も来日している。自身がイーストマン・ウインドアンサンブルのユーフォニアム奏者出身であったことから、私個人として来日の度に親交を深め、ウインド・アンサンブルについて様々なアドヴァイスを頂いた。通常の編成にないアルトフルートやピッコロトランペットが使われており、そのこだわりが興味深い。

イギリス風景画家の作品から「乾草の車」ジョンコンスタブル1821年

交響曲第2番/ジョン・バーンズ・チャンス

ジョン・バーンズ・チャンス(John Barnes Chance、1932年11月20日 – 1972年8月16日)は、米国テキサス州ボーモント生まれの作曲家。ボーモント高校のバンドとオーケストラでティンパニーを演奏している頃から作曲を志しテキサス大学にて、クリフトン・ウィリアムズ(ファンファーレとアレグロ、交響組曲で米国吹奏楽作曲賞ABA第1回第2回受賞者)に作曲を師事する。大学ではフランシス・マクベス(作曲家)と親交があったが、彼らとの3人組はオーステインスリーと云われていた。しかし当時の学生たちのヒッピー風潮に影響され、大学授業に欠席が多く一度退学している。(共感できる)最終的にはテキサス大学へ復学し修士号を得ている。(やはり志を捨てない)大学やオースティン交響楽団でティンパニ奏者として活動した後、1957年米陸軍軍楽隊の専属編曲者として活動。その一年後、朝鮮戦争の最前線の第8軍隊に、強制的に派遣される。この陸軍の決定に猛烈に文書で抗議したがその要求は拒否されている。しかしこの韓国での経験とインスピレーションは1965年に発表されて見事ABAを受賞する「朝鮮民謡の主題による変奏曲」に繋がった。1960年陸軍を除隊し、フォード財団のプロジェクト若手作曲家に選出される。この時代に多くの教育的な作品を発表している。その業績が認められ1966年ケンタッキー大学にて教鞭をとり1971年に作曲、理論の主任になる。しかしその翌年、自宅庭にて愛犬を隔離するための電気柵を作成中に200ボルトのワイヤーが原因で感電事故を起こし急死した。39歳での他界は、あまりも突然の悲報であった。将来を期待された若き作曲家の作品は、教育的な作品が有名で『呪文と踊り』、『朝鮮民謡の主題による変奏曲』、『ブルーレイク序曲』などは若い奏者が取り上げる作品として人気がある。

吹奏 楽 と 打楽器 の ため の 交響 曲 第 2 番 は、 チャンス が グリーンズボロ に い た 頃 の 吹奏 楽 の ため の 初期 の 交響 曲 に 基 づい た作品です。彼 の師クリフトン・ ウィリアムズ は、 それぞれ が 4 音符 の モチーフ C#- D- F-Fで 作品 を 書く こと に 賛成しました。1962 年 2 月、 チャンス は 1楽章の テープ を ウィリアムズ に 送り ました。しかしウィリアムズはさらなるアイデアが必要だと伝えました。10 年 後、ノース ダコタ 州 北西 音楽 センター が 彼 に Minot State College Wind Ensembleの為 の委嘱を依頼してきました。彼は10年前のこの未完成曲に手を加え、緩徐セクション と コーダ を 追加 し、 彼 の 元 の アイデア( 3楽章Slancio) を完成させ依頼 を 完了 し まし た。しかし不慮の事故により残念 ながら、 彼 は 完成 し た 作品を聴く事はできなかった(何という不運か)(CD. The Legacy John Barnes Chance より)

第1楽章Sussuradoスッスランド(ささやくように、つぶやくように)モチーフ C#- D-F-Eを繰り返し再現しながら展開させていくソナタ形式。C#- D-F-Eが「ささやかれ」て、楽器が少しずつ増えてゆく展開こそ交響曲作品である!といった教育的な配慮があると思う。一つのテーマを自由に発展させそれをソナタ形式で完結させる手法を、演奏者に分かり易くさらに音楽性に富み興奮と驚き、興味を持たせるように書かれている。テーマは長くては覚えられない、単純なほど展開の可能性が多くなる。かの名曲ジャジャジャジャーンの様に。時には何方かのイニシャルを使ったり、チャンスのC#- D- F-E(ド♯ーレーファーミー)は、きっとあなたの頭に巣作ってしまうだろう。そのまま2楽章、3楽章に変化する17分間のトリップを楽しんでもらおう。

第2楽章Elevatoエレヴァート(気品をもって、気高く)バスクラ、コントラバスクラとトロンボーンのペダルトーンによるB♭音上にクラリネット、ホルンによるゆったりした深淵の響きが拡大していく。深い沼の底から水面を見るようなミステリアスな世界が表現される。やがてその静寂に、テーマC#- D- F-Eを反転させたD-C#- E-Fの素早い音形が信号のように繰り返されアタッカ(次の曲へ休みなしで進む)で3楽章へ進む。

第3楽章Slandoズランチョ(突進、勢い、情熱)全楽章の発想記号は、あまり使用されない楽語だが、チャンスのこだわりが感じられる。この楽章は、テーマC#- D- F-E(ド♯ーレーファーミー)の終結といえよう。特にtimpani奏者であったチャンスの見事な管楽器と打楽器の掛け合いが印象的。また随所に彼が影響を受けた同時代の作曲家の手法が見ることができる。バーンスタインのウエストサイドが見えたり、特にウィリアム・シューマンのチェスターやジョージ・ワシントン・ブリッジにある木管セクションと金管セクションの掛け合い(私の大好きな所!)が、チャンスの見事な掛け合いに蘇っている。(ここ好きだ!)もっと長生きして沢山の名曲を書いて欲しかった作曲家、上品なお顔も2枚目で素敵でした、どんな作品が生まれたのだろうか。今年で没後50年、命日は真夏の8月16日。合掌。

酒井格/森の贈り物 Legacy of the Woods

1970年3月24日大阪生まれ。4歳からピアノを習い始め、6歳で最初のピアノ作品を作曲。高校時代では吹奏楽部でフルートを演奏、最初の吹奏楽作品「たなばた」を作曲する。1990年大阪音楽大学作曲科に入学し、千葉英喜、田中邦彦の両氏に作曲を師事する。1994年同大学を首席で卒業後、同大学院に進学1996年に修了。プロの吹奏楽団から、アマチュアバンドまで数多くの委嘱を受け新作を発表。選抜高等学校野球大会では2009年の第81回大会以降、入場行進曲の編曲も行う。

森の贈り物(2003年)作曲者の解説から〜日本の南西部、鹿児島県に屋久島という深い森に覆われた島があります。1993年にユネスコの世界遺産に登録されたこの森には、樹齢7200年といわれる縄文杉をはじめ、樹齢1000年を越える巨木が数多くあり、その佇まいは神々しく、神秘的ですらあります。古代から、島に住む人たちに大きな恵みをもたらしてきたこの森も、数十年前には木材需要の高まりにより、数多くの樹木が伐採され、森が失われる危機に見舞われたこともありました。しかし森の大切さを訴える人たちの、真摯な願いが叶い、現在では緑豊かな森が多くの人たちによって守られています。目をつぶって耳を澄ませると、鳥の鳴き声、水のせせらぎが聞こえ、私たちが生きるのに必要な美しい空気を作り出してくれる森。屋久島のような大森林でなくとも、そんな豊かな恵みを残してきてくれた多くの森がが、これからも私たちの手によって守られて行くことを願って、この作品を書きました。

森の精の歌声、森の長老の語り、森の生きもの達の行進、ある時は嵐に襲われる森ですが、嵐が去って美しい森の景色が広がる様子を、この曲から感じ取って貰えるでしょうか?

真島 俊夫/三つのジャポニズム Les Trois Notes du Japon

真島 俊夫(ましま としお)1949年2月21日 – 2016年4月21日)山形県鶴岡市出身。山形県立鶴岡南高等学校から神奈川大学工学部へ進学(吹奏楽団ではトロンボーン担当)。作曲家を志し和声法と作・編曲法を兼田敏に師事。全日本吹奏楽コンクール課題曲をはじめとする数多くの吹奏楽曲を作曲している。また1990年代より「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」にスコアを提供、代表的な編曲作品としては「宝島」「オーメンズ・オブ・ラブ」「チュニジアの夜」等がある。そして「ドラゴンクエスト」シリーズの全吹奏楽編曲を担当。吹奏楽界のジャズ・ポップスの啓蒙に努める。2006年、フランスのリールで開催されたクー・ド・ヴァン国際交響吹奏楽作曲コンクールに於いて『鳳凰が舞う』がグランプリを受賞。

三つのジャポニズムは、2001年4月27日にダグラス・ボストック指揮の東京佼成ウインド・オーケストラにより初演され、その後ヨーロッパやアメリカでも多くのバンドによって演奏されている。以下作曲者自身による解説。

「鶴が舞う」は丹頂鶴の求愛の踊りである。丹頂鶴は頭頂部の赤と一部の黒い羽が全体の白い羽とのコントラストを見せて美しい。そして雄がコーと一声鳴くと、雌がコーコーと答える。途中、鶴の羽ばたきと鳴き声の描写が入る。

2.雪の川 La rivière ennegee

「雪の川」は冬の峡谷を静かに流れる川に、雪がしんしんと降り続ける墨絵のような光景を描写した。

3. 祭り La fete du feu

「祭り」は激しい夏祭りを描写で、いろいろな祭りのリズムが目まぐるしく登場する音のコラージュになっている。中間部は夏の炎天下、青空に入道雲が出ている日本の夏の光景だ。やがて遠くから聞こえてくる太鼓は、私が子供の時から親しんだ母の生まれ故郷、青森の「ねぶた」のリズムである。

●1楽章の鳥の羽音は、団扇か扇子と手を打ち合わせて出して下さい。丁度、焼き鳥か鰻の蒲焼きを焼くときの要領です。

●2楽章の「竹鳴子」は手に入らないので自作をお勧めします。直径約2㎝、長さ20㎝位の竹の棒を20〜30本用意します。これらの上端に穴を開け、紐を通して板に吊るします。竹製のウインドチャイムと考えて下さい。2〜3列にすると鳴りが良いです。この下部を手のひらで左右に揺らすようにかき鳴らします。カラカラカラという音です。

●3楽章の桶太鼓のバチは竹の棒を使います。剣道の竹刀を分解して適当な長さにに切ったものを2本使うのが一番近いです。先で叩くのではなく、膨らんでいる中間部の面で打つ感じです。ドンではなく、バンッという感じです。最近は「ねぶた祭り」の動画もたくさんありますから、研究して下さい。(弘前の「ねぷた」ではなく、青森の「ねぶた」です。

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